ふぁーみんぐ通信99年10月号
非木材資源って何? 〜麻がたくさんの巻〜
ケナフは非木材資源である。
当初からこのキャッチフレーズに違和感があった。なぜなら、自分自身が■非木材繊維の分類
非木材資源という言葉を聞いてもケナフ以外の非木材資源のことがいま
いちよくわからなかったからだ。
しかし、そんな疑問を吹き飛ばした本がようやく出てきた。「環境の21世紀の非木材資源」ユニ出版 1999年7月発行
注文:03−5695−1938
知りたいことがぱっとわかる本に巡り会えると、とてもうれしい気分で
ある。多少ケナフの有用性に力を入れている面があるものの、ケナフ
以外の植物たちもたくさん紹介していて、どんな非木材資源が注目され
ているのかの概要を知ることができた。
非木材資源といっても利用する部分を的確に表現すると「非木材繊維」
となる。ここでは、木材である広葉樹、針葉樹以外の繊維植物をあげて
みた。A.被子植物
a.双子葉植物(胚に2対の子葉があるやつ、芽が出たら双葉!)
(1)種毛利用植物 :綿
(2)靱皮利用植物
草本性(一年草):大麻、苧麻、亜麻、黄麻、ケナフ、オクラ
木本性(多年草):ミツマタ、コウゾ、カジノキ、クワb.単子葉植物(胚に1つの子葉があるやつ、芽が出たら一葉!)
(1)茎繊維利用植物 :マニラ麻、サイザル麻、バナナ
(2)茎稈繊維利用植物:稲わら、麦わら、サトウキビ(バガス)
竹、アシ、パピルス
(3)果実繊維利用植物:ヤシ
個々の行動上の性別の影響は何ですか?■麻マークが付けられる亜麻と苧麻
・亜麻(あま、Flax、Linen、リネン)
→ロシア、ベルギー、フランス、中国北部などの北国育ち!
・苧麻(ちょま、Ramie、ラミー、からむし、まお)
→フィリピン、ブラジル、中国南部などの南国育ち!
「麻」といっても上記のようにたくさんあり、全部で約20種類もある。■教科書で習ったジュートとサイザル麻
一般的に麻といえば、繊維作物のことを示しているが、 家庭用品品質表
示法で「麻」と表示することが認められているのは、リネン(亜麻)とラミ
ー(苧麻)の2種類だけである。これらは、衣服やシーツとして身近な麻である。
麻マークというのは、日本麻紡績協会が実施しており、通産省生活産業局原
料紡績課を所管官庁としている。日本では、明治時代の北海道の屯田兵が亜麻を植え、ロープや軍服の用途に
なったこともある。苧麻の方は、別名、からむしといい、福島県昭和村
のからむし織り、トライアスロンで有名になった宮古島の宮古上布で知られ
ています。(私もはじめて知りました。。。)
・黄麻(こうま、Jute、ジュート)
→インド、バングラデシュ、タイが主な産地
・サイザル麻(Sisal hemp)
→ケニア、タンザニア、メキシコ、ブラジルが主な産地何の用途に使われているのかよくわからないままに中学校のときに覚えて
しまった麻の仲間。
ジュートは、麻袋、カーペット基布、梱包や鋼管巻きのヘシアンクロスに
使用され、サイザル麻はロープに使用される。どちらも剛粗なため衣服用に
は向いていない。ジュートとよく似た同じシナノキ科の仲間に野菜の王様
「モロヘイヤ」がある。これは、若葉に甘味があって栄養抜群なやつだ。
フグ毒乾燥させていますか?■1万円札はマニラ麻でできている。
・マニラ麻(Abaca、Manila hemp)■ケナフと大麻は何が違うのか?
→フィリピン、エクアドルが主な産地このマニラ麻は、あのバナナと同じ仲間である。植物学的には、バショウ科
バショウ属にバナナもマニラ麻もある。耐久性、保存性にすぐれ、比較的
低コストで生産できることから、現在の日本のお札は、マニラ麻製である。
話題の2000円札もおそらくマニラ麻製でしょう〜。ちなみにドル紙幣は
亜麻と木綿、ロシアのルーブル紙幣は、大麻が使われている。
その他の用途にマニラ麻は、ロープや空気清浄機のエアフィルター用紙、
電気掃除機の集塵バックなんかにも利用されている。最近、麻類の中でも注
目度・利用度が徐々に高まっている植物である。
・ケナフ(kenaf、洋麻)
・大麻(たいま、Hemp、ヘンプ)
→ロシア、ルーマニアなどの東欧、中国が主な産地成長速度、背丈、葉や茎の姿がよく似ている。逆に違う点をあげてみると
ケナフは、ハイビスカス科だから花がきれい。大麻は、・・・。
大麻は、麻の実として種子が食べられる。ケナフは、・・・。
ケナフは、環境問題の救世主として登場し、最近導入された外来種。
大麻は、縄文時代から日本で栽培された歴史と伝統のある植物。
ケナフ農家は一軒もいないけど、大麻農家は現存する。
ケナフは、誰でも自由に栽培可能。
大麻は、マリファナの原料となるため栽培免許が必要。
矢印カエルはどのようにそこに名前を手に入れた■模造紙は、やっぱり模造品だった。
・三椏(ミツマタ)■麻とはいわないが・・・
・楮(コウゾ)
・雁皮(ガンピ)
→日本の和紙の3大原料小学校のときによく模造紙を使った記憶がある。しかし、今日の今日まで
模造が何の模造であるかなんて考えたこともなかった!!!模造されたの
は、和紙の原料として有名な三椏(ミツマタ)だった。明治時代のお札は、この
ミツマタ紙が使われ、紙の出来具合としても最高級であったのだ。ところが、
コストがかかるミツマタよりも木材パルプから紙をつくる技術(苛性ソー
ダ法)が発達し、その紙が普及。それを模造紙と読んで今日に至る。。。
これが模造紙の正体である。(驚!)
・綿(コットン)
・オクラ
・竹(タケ)
・葦(ヨシ、アシ)衣服で有名な綿であるが、環境問題の観点から捉えるとアメリカの農薬の
50%近くが綿花の栽培に使用される。農薬=外因性内分泌撹乱化学物質
(環境ホルモン)の出所である。そんな話を聞くと、100%コットンは
肌にやさしい〜と気楽にいえない状況である。
だからこそ、無農薬のオーガニックコットンに目が向けられる。オクラも有望ですか?私自身、ビールのつまみでしか食べないオクラが繊維
作物としてもなかなか優秀らしい。1960年代から10年以上かけてア
メリカ農務省が研究した「新繊維作物探求」によると総合評価で有望な植
物にオクラとケナフがあげられている。ケナフが注目されたきっかけは、
この研究成果だったみたいだけれど、一方のオクラは、、、、オクラ製の
紙コップなんてないよなあ〜。どうしたんでしょうか、オクラさん?竹取物語〜竹槍〜竹炭に代表されるように日本の生活と文化に深い植物の
竹。中国なんかでは、竹紙も結構使われているらしい。竹については、
たくさん書くネタがあるので、今月はこの辺で終わり。
ホントは、葦(アシ)だけど、アシ=悪し、だから、良し=ヨシと呼ばせた
植物。このワープロでも「アシ」と「ヨシ」どちらも「葦」で変換される。
簾の原料で有名。私の実家の滋賀県では、ヨシ保護条例までつくって
琵琶湖周辺に残された貴重な植物を保全・活用をしている。
・ヤシ(ココヤシ、Coconut)
→主に東南アジア全域で栽培過去のふぁーみんぐ通信でも少し紹介したけど、もう一度登場。ブラジル
のメルセデスベンツの自動車の内装材(クッションとかドアの内装など)は、
地元のヤシの繊維をつかっている。植物を工業製品に利用しようとすると
ゴムの木やパームオイルの原料となるヤシのようにプランテーション化
(単一大規模栽培)する。これは、あんまり持続的な農法ではない。
このアマゾンの例では、アグロフォーレストリーという林業と農業が混在する
持続的な農法で栽培されたヤシを使用する。自動車業と農業、先進国の多国籍
企業と途上国の農業組合、熱帯地域における林業と農業、今まで考えられない
ような組み合わせがそこに存在する。
詳細参照「アマゾンの畑でとれるメルセデスベンツ」泊みゆき、原後雄太(築地書館)
■植物資源 VS 石油資源
非木材資源として麻類を中心に見てきましたが、これ以外にも資源として
有望な植物はまだまだたくさんある。紙面の都合で省いたものもいくつか
ある。
麻についていろいろ調べる中で、大事なことを一つ発見した。いままで、
ケナフって環境にいいんだ。大麻はもっと環境にいいんだ。マニラ麻も
オクラもすご〜い。この種の話が周りにあると自分の頭の中で、混乱が
生じる。何かの植物が絶対いい!というはあり得ない。植物なんだから、
それぞれの個性・特徴がもっとも生かせる分野があり、棲み分けと共存
ができそうだということに気づいた。そして、たいへん便利で再生不可能な資源の石油に依存した今の社会
から再生可能な植物資源を活用した社会へ移行するには、なるべく多くの
種類の植物が様々な用途で普及し、活躍することだ。
一般的に、植物の利用は、栽培管理する分だけコストが高く、石油
由来の製品の低コストと戦う宿命にあるけれど、ここを突破しないと明
るい21世紀循環型社会は拓けない。
関係者の努力に期待すると同時に私もなんとか突破できるよう知恵を
絞りたい。以上
<ご参考>
写真や絵で植物の姿、形、詳細を知りたい方は、こちらのホームページまで。
資源作物見本園<亜麻、苧麻に取り組む企業>
トスコ中央研究所
岡田麻株式会社<苧麻はいいかがですか?>
福島県昭和村<大麻の今と昔>
大麻堂
美麻村「麻の館」
京都麻業株式会社「麻小路」<ケナフがんばっています>
ケナフの会
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